【Q】吸入薬のステロイドランクは?

【質問】ステロイドの強弱、使い分けについて質問です。
塗布薬はランク分けされていますが、点鼻薬や点眼薬、吸入薬はそういった情報があまりないように思います。
点鼻や吸入では強さは考える必要がないのでしょうか?
使い分けとしてはデバイスや用法、適応の違いくらいのものでしょうか?

【A】ステロイド点眼液に関しては種類や濃度を参考にして経験則的に使い分けているのが現状です。

https://closedi.jp/4658/

 

ステロイド貼付剤はODT法 (密封法)により、吸収量が増加するため、塗布剤と比較すると以下のようにランクが1〜2ランク上がると考えられます。

https://closedi.jp/4662/

 

点鼻薬のステロイドの効果の強弱に関しては、明確なデータはありません。臨床現場では液状タイプなのか、粉状タイプなのかなどデバイスの違いによって使い分けていると考えられます。

https://closedi.jp/5358/

 

現在、発売されている吸入薬に含有されているステロイドの成分は5種類しかありません。(2020年3月現在)

  • フルチカゾンプロピオン酸エステル (アドエア、フルタイド、フルティフォーム)
  • フルチカゾンフランカルボン酸エステル (レルベア、テリルジー、アニュイティ)
  • ベクロメタゾンプロピオン酸エステル (キュバール)
  • ブデソニド (ビレーズトリ、パルミコート、シムビコート)
  • シクレソニド (オルベスコ)
  • モメタゾンフランカルボン酸エステル (アズマネックス)

 

また、各製剤の含有成分は以下の通りとなります。

  • フルタイド  エアゾール (フルチカゾンプロピオン酸エステル吸入剤)
  • アドエア エアゾール (サルメテロールキシナホ酸塩・フルチカゾンプロピオン酸エステル吸入剤)
  • アドエア ディスカス (サルメテロールキシナホ酸塩・フルチカゾンプロピオン酸エステル吸入剤)
  • アニュイティ エリプタ (フルチカゾンフランカルボン酸エステル吸入)
  • レルベア エリプタ (ビランテロールトリフェニル酢酸塩・フルチカゾンフランカルボン酸エステル吸入剤)
  • テリルジー エリプタ (フルチカゾンフランカルボン酸エステル・ウメクリジニウム臭化物・ビランテロールトリフェニル酢酸塩吸入剤)
  • キュバール エアゾール (ベクロメタゾンプロピオン酸エステル吸入剤)
  • パルミコートタービュヘイラー、吸入液  (ブデソニド吸入剤)
  • シムビコートタービュヘイラー (ブデソニド・ホルモテロールフマル酸塩水和物吸入剤)
  • ビレーズトリエアロスフィア (ブデソニド・グリコピロニウム臭化物・ホルモテロールフマル酸塩水和物吸入剤)
  • フルティフォーム エアゾール (フルチカゾンプロピオン酸エステル・ホルモテロールフマル酸塩水和物吸入剤)
  • オルベスコ インヘラー(シクレソニド)
  • アズマネックスツイストヘラー (モメタゾンフランカルボン酸エステル吸入剤)

 

ステロイドの成分の5種類うち、どの成分が最も効果が高いのでしょうか。

アニュイティ エリプタ(フルチカゾンフランカルボン酸エステル)

グルココルチコイド受容体(GR)に対する親和性 (in vitro)
ヒト肺組織のサイトゾル分画を用いて H-フルチカゾンフランカルボン酸エステル(FF)、H-フルチカゾンプロピオン酸エステル(FP)又は 3H-デキサメタゾンの結合試験を行い、それぞれの解離定数を算出し、 デキサメタゾンのグルココルチコイド受容体への親和性を 100 とした場合の相対的受容体親和性を求めた。 その結果、FF はヒト GR に対して高い結合親和性を示し、その親和性は FP の約 1.7 倍、デキサメタゾン の約 30 倍であった。(アニュイティ エリプタ  インタビューフォーム )

→フルチカゾンフランカルボン酸エステルはフルチカゾンプロピオン酸エステルのグルココルチコイド受容体(GR)に対する親和性は1.7倍と報告されています。
アニュイティ エリプタ (フルチカゾンフランカルボン酸エステル) > フルチカゾンプロピオン酸エステル (フルタイド)

 

パルミコート タービュヘイラー (ブデソニド)

ブデソニドは強い局所抗炎症作用を示し、全身作用との分離に優れた糖質コルチコイドであり、各種炎症性疾患の局所療法に使用されている。

血管収縮作用
外国人健康成人62名を対象にブデソニドの局所抗炎症効果をプロピオン酸ベクロメタゾンとの無作為二重盲検試験により検討した。各種濃度の薬剤を前腕屈筋部皮膚表面に18時間密封塗布し、皮膚蒼白度を判定した結果、回帰直線(対数濃度-反応直線)の勾配はブデソニドとプロピオン酸ベクロメタゾンの間で有意差はみられなかったが、相対効力比はブデソニド1に対しプロピオン酸ベクロメタゾン0.61(99%信頼区間0.42~0.88)で、両薬剤間に有意差がみられた。よってヒト血管収縮作用においてブデソニドはBDPの約2倍の効力があることが示唆された。
(パルミコート タービュヘイラー インタビューフォーム)

→ブデソニドはプロピオン酸ベクロメタゾンの血管収縮作用においてブデソニドはBDPの約2倍の効力があることがわかります。
パルミコート タービュヘイラー (ブデソニド) > キュバール エアゾール (ベクロメタゾンプロピオン酸エステル吸入剤)

 

以上をまとまると、吸入薬における含有ステロイドの強弱は以下のとおりと考えられます。

  • アニュイティ エリプタ (フルチカゾンフランカルボン酸エステル) > フルチカゾンプロピオン酸エステル (フルタイド)
  • パルミコート タービュヘイラー (ブデソニド) > キュバール エアゾール (ベクロメタゾンプロピオン酸エステル吸入剤

吸入薬の効果は成分の肺内到達率が重要となるため、「吸入の手技」や「粒子の大きさ」、「吸入残量率*」、「患者の吸入流速*」などが重要な因子と考えられます。そのため、臨床現場では含有ステロイドの強弱ではなく、各吸入薬のデバイスや用法などにより、吸入薬の選択をしていると考えられます。

*ドライパウダー式吸入剤における残量率と吸入流速において言及されている論文があります。(アレルギー 51 (7), 544-551, 2002) (昭和医会誌 71 (6), 610-615, 2011)

 

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