【質問】メトホルミンはヨード造影剤と併用注意ですが、構造が似ているツイミーグ (イメグリミン)はヨード造影剤と併用しても問題はないのでしょうか?
【A】ツイミーグ (イメグリミン)は、メトホルミンと構造が類似しているビグアナイド系の薬剤であるため、ヨード造影剤投与時に乳酸アシドーシスを引き起こす可能性がないとは言い切れません。しかし、ツイミーグの乳酸アシドーシスのリスクはメトホルミンと比べると非常に低いと考えられており、ツイミーグとヨード造影剤の併用については添付文書で注意喚起されていません。
ツイミーグ (イメグリミン)は個々の患者における乳酸アシドーシスのリスクを考慮した上で、ヨード造影剤と併用する必要があると考えられます。例えば、メトホルミンはeGFR60 (mL/min/1.73m2) 以上であれば、事前休薬は必要なく、造影後の継続投与も可能とされていることから、腎機能によってツイミーグ (イメグリミン)とヨード造影剤の併用を考慮したり、また、ツイミーグ (イメグリミン)から情報が豊富なメトホルミンに切り替えるというのも一つの選択肢かもしれません。
これらの内容を裏付ける内容を以下に記載します。
ヨード造影剤を用いて検査を行う患者においては、本剤の併用により乳酸アシドーシスを起こすことがあるので、検査前は本剤の投与を一時的に中止すること(ただし、緊急に検査を行う必要がある場合を除く)。ヨード造影剤投与後48時間は本剤の投与を再開しないこと。なお、投与再開時には、患者の状態に注意すること。 (引用 : メトグルコ添付文書)
→メトホルミンとヨード造影剤を併用する場合にはメトホルミンを一時的に中止する必要があります。この理由は腎機能が低下し、メトホルミンの排泄が低下することがあるためです。
ガイドラインには「ヨード造影剤を投与する場合には、緊急検査時を除きビグアナイド系糖尿病薬(メトホルミン)を一時的に休薬するなど、適切な処置を行うことを推奨する」と記載されています。 (腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関する ガイドライン2018)
しかし、米国や欧州のガイドラインではeGFR30 (mL/min/1.73m2) 以上においては、ヨード造影剤を用いた検査前後にメトホルミンの休薬は必要ないとされています。
また、2020年に改訂された「メトホルミンの適正使用に関するRecommendation 」においては「eGFRが30〜60の患者では、ヨード造影剤投与後48時間はメトホルミンを再開せず、腎機能の悪化が懸念される場合にはeGFRを測定し腎機能を評価した後に再開する。」とされています。
病院などの院内内規などでは、eGFR60 (mL/min/1.73m2) 以上であれば、メトホルミンの事前休薬は必要なく、造影後の継続投与も可能とされているところもあります。
イメグリミンはメトホルミンと同様にビグアナイド系薬剤であるため、構造やインスリン抵抗性改善作用の機序の一部が共通しています。ビグアナイド系薬剤は乳酸アシドーシスのリスクがありますが、イメグリミンは承認時までの臨床試験の段階までに報告がなく、メトホルミンとイメグリミンは乳酸アシドーシスに対するリスクが異なると考えられています。イメグリミン発売後の「市販直後調査」においては乳酸アシドーシスの報告が1例ありますが、該当患者は透析患者かつ、イメグリミン投与前より代謝性アシドーシスの傾向あったようです。そのため、「市販直後調査」後においても乳酸アシドーシスによる添付文書改訂が行われませんでした。
BG については乳酸アシドーシスがリスクとして知られていることか ら、作用機序の一部が共通する本剤についても当該リスクについて検討した。実施された単独療法及び 併用療法に関する各試験(014、018、019 及び 020 試験)において乳酸アシドーシスに関連する事象の 発現は少なく、血中乳酸値の顕著な上昇を認めた被験者数も少なかったこと、実施されたすべての臨床 試験において乳酸アシドーシスは認められていないことから、臨床試験において本剤の乳酸アシドーシ スのリスクを明確に示す結果は認められていない。しかしながら、一般的に、乳酸アシドーシスの発現 頻度は低く、実施された臨床試験の規模から乳酸アシドーシスのリスクを評価することには限界がある こと、臨床試験において本剤投与中に血中乳酸値の上昇が持続し、投与終了後に低下した被験者が認め られていること、及び臨床試験では腎機能障害、肝機能障害、心機能低下を合併した被験者等、乳酸ア シドーシスのリスクが高いと考えられる集団が除外されていることについても留意する必要がある。ま た、非臨床薬理試験では本薬とメトホルミンでは乳酸値に対する影響が異なることを示唆する結果も得られているが、メトホルミンと同様にミトコンドリアの Complex I 阻害作用及び糖新生抑制作用が示さ れていることも考慮する必要がある。以上を踏まえると、製造販売後においても本剤の乳酸アシドーシ スに関するリスクについて引き続き情報収集することが重要であり、使用成績調査を実施した上で、特 に乳酸アシドーシスの既往や肝機能障害、低酸素状態を伴いやすい状態、脱水等の乳酸アシドーシスの リスク因子を有する患者における乳酸アシドーシスの発現状況に注視するとともに、血中乳酸値が測定 された場合には当該情報も収集することが適切と考える。また、本剤は腎機能障害を有する患者では曝 露量が上昇することから、腎機能障害患者を対象に実施予定とされている製造販売後臨床試験において も、血中乳酸値の推移を評価することが適切である。
(ツイミーグ錠審査報告書より引用)
メトホルミンを含むビグアナイド系で、造影剤を使うときに、中止すると思いますけれども、この薬剤に関しての造影剤の情報があるかどうか、実際に使えるようになったときに、その対処は必要がないかどうかを御教示ください。
→医薬品医療機器総合機構 御質問いただき、ありがとうございます。本剤を用いた臨床試験で造影剤を使用した際の情報は得られていません。本剤と造影剤の併用に関する注意喚起について、メトホルミンに関しては、乳酸アシドーシスのリスクが考慮され、腎障害のリスクを有するヨード系の造影剤などを使用する際には、メトホルミンの使用を一時中断することが注意喚起されています。
本剤に関しては、非臨床試験、臨床試験の結果を考慮すると、本剤とメトホルミンでの乳酸アシドーシスに対するリスクは異なる可能性があり、現時点では、乳酸アシドーシスを本剤投与によるリスクと判断ができるだけの明確な根拠が得られていないと判断しております。したがって、添付文書においては、ヨード系造影剤についてメトホルミンと同様の注意喚起は予定しておりません。
(2021年5月26日 薬事食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録)