【Q】低用量アスピリンの胃腸障害にH2遮断薬は有効か?ガスターなど

【A】PPI(プロトンポンプ阻害薬)H2遮断薬よりも低用量アスピリンによる消化性潰瘍予防に有効であるという報告がある。一方で、日本人の胃酸分泌能は欧米人より低く、ピロリ菌感染率や胃粘膜萎縮を来たしている症例が多いため、H2遮断薬も有効であると報告されています。PPIが優れているという報告、有意差がなかったという報告はあるが、H2遮断薬が優れているという報告はないためPPIの方が効果が高いと考えられる。これらを踏まえた上で、低用量アスピリン服薬患者における消化性潰瘍予防にはPPIからH2遮断薬に変更することも一つの選択肢となると考えられる。

 

以下の報告1) により、低用量アスピリンの投与時にはH2遮断薬よりもPPIの併用が望ましいと考えられる。報告2) ではH2遮断薬でも低用量アスピリンの消化性潰瘍を低下すると報告されている。報告3) では有意差はなかったが、PPIの方が消化性潰瘍がやや少なかったと報告されている。これらからPPIが使用できない状況であれば、H2遮断薬に変更することも選択肢の一つであると考えられます。

報告1) 低用量アスピリンが投与された日本人患者に対してはPPI投与によって胃十二指腸潰瘍およびびらんの両方のリスクが低かった (オッズ比1.83 (1.18 – 2.88 p = 0.00082)) 。しかし、H2ブロッカーを投与された患者は、びらんのリスクは低下したが、胃十二指腸潰瘍リスクは低下しなかったと報告がある。(MAGIC STUDY)
Risk factor profiles, drug usage, and prevalence of aspirin-associated gastroduodenal injuries among high-risk cardiovascular Japanese patients: the results from the MAGIC study. J Gastroenterol. 2014 May;49(5):814-24

報告2) 日本人の胃酸分泌能は欧米人より低いこと、Hp 感染率が高く胃粘膜萎縮を来たしている症例が多いことより、常用量のH2ブロッカー でも日本人における低用量アスピリン起因性潰瘍の予防になるかもしれない。
中島さやか,新井晋,石井恵子ほか.低用量アスピリン潰瘍に対する抗潰瘍薬の予防,治療効果の検討.
(消化器科 2007;45:273-6)

報告3) 低用量アスピリンの上部消化管出血または潰瘍はPPI(ラベプラゾール20mg/day)とH2遮断薬(ファモチジン 40/day)で有意差はなかったが、PPIの方がやや少なかった。(Gastroenterology. 2017 Jan;152(1):105-110)

 

参考文献
• Gastric Acid Suppression With Recurrent Clostridium difficile Infection: A Systematic Review and Meta-analysis.JAMA Intern Med. 2017 Jun 1;177(6):784-791.
• proton pump inhibitors in prevention of low-dose aspirin-associated upper gastrointestinal injuries. World J Gastroenterol. 2015 May 7;21(17):5382-92.
• Famotidine for the prevention of peptic ulcers and oesophagitis in patients taking low-dose aspirin (FAMOUS): a phase III, randomised, double-blind, placebo-controlled trial.Lancet 2009; 374: 119-125
• Prevalence of gastroduodenal ulcers/erosions in patients taking low-dose aspirin with either 15 mg/day of lansoprazole or 40 mg/day of famotidine: the OITA-GF study 2.BMC Res Notes. 2013 Mar 26;6:116
• Similar Efficacy of Proton-Pump Inhibitors vs H2-Receptor Antagonists in Reducing Risk of Upper Gastrointestinal Bleeding or Ulcers in • • High-Risk Users of Low-Dose Aspirin. Gastroenterology. 2017 Jan;152(1):105-110
• Risk factor profiles, drug usage, and prevalence of aspirin-associated gastroduodenal injuries among high-risk cardiovascular Japanese patients: the results from the MAGIC study. J Gastroenterol. 2014 May;49(5):814-24
• 低用量アスピリン潰瘍に対する抗潰瘍薬の予防,治療効果の検討.消化器科2007;45:273-6

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