【Q】ランソプラゾールの15mg規格のみが「NSAIDs投与時の胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制」の適用となっている理由は?

【A】PPI (プロトンポンプ阻害薬) は低用量であっても「非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制」に対して効果があるため、ランソプラゾールに関しては低用量である15mgのみが適用となっています。

また、ラベプラゾール (商品名 : パリエット) 10mg, 20mgの発売後に5mg規格が追加されたように低用量の規格が、後に追加されたケースもあります。
一方で、ネキシウムカプセルは、2規格 (10mg, 20mg)のうち低用量(10mg)における臨床試験を行なっておらず、高用量 (20mg) のみが適用となっています。

以上より、「副作用の観点から低用量の規格のみの適用」、「十分な効果を期待するという観点から高用量の規格のみの適用」の薬剤があると考えられます。

以下に詳細を記載します。

ラベプラゾール (商品名 : パリエット)について
パリエット錠10mg, 20mgは1997年に発売されましたが、2015年に「低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制」のためにパリエット錠5mgが剤形追加となりました。

パリエットの用法用量は「低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制に対しては、通常成人には1日1回5mgであるが、効果不十分の場合には1日1回10mgを投与することができる。」です。臨床試験においては5mg, 10mg, 20mgとそれぞれの用量で試験されていますが、20mgと10mgの効果はほとんど変わらないため、5mgや10mgの低用量での適用となったと考えられます。

ネキシウムカプセルについて
1回20mgが成人の通常用量となっています。
「非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制」の臨床試験においては、ネキシウムカプセルは20mgの規格のみでした。

 

PPIの添付文書に記載がある用法・用量

ラベプラゾール
〈低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制〉
通常、成人にはラベプラゾールナトリウムとして1回5mgを1日1回経口投与するが、効果不十分の場合は1回10mgを1日1回経口投与することができる。

ランソプラゾール
〈非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制の場合〉
通常、成人にはランソプラゾールとして1回15mgを1日1回 経口投与する。

ネキシウムカプセル
〈低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制〉
通常、成人にはエソメプラゾールとして1回20mgを1日1回経口投与する。

タケキャブ錠
〈低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制〉
通常、成人にはボノプラザンとして1回10mgを1日1回経口投与する。

※オメプラゾールは「非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制」に対する適用はありません。

 

ラベプラゾールの臨床試験
低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制

健康成人男子における胃内pHに対し、1日1回5mg投与、1日1回10mg投与、1日1回20mg投与でともに著明な上昇作用を示し、投与5日目の24時間中にpH4以上を示す時間の割合は1日1回5mg投与のEM※で46%、PM※で63%、1日1回10mg投与のEM※で58%、PM※で72%、1日1回20mg投与のEM※で61%、PM※で76%であった。
※肝代謝酵素チトクロームP450 2C19(CYP2C19)表現型は、下記遺伝子型より分類される。
EM(extensive metabolizer):CYP2C191/1、 CYP2C191/2又はCYP2C191/3
PM(poor metabolizer):CYP2C192/2、CYP2C192/3又はCYP2C193/3

→5mg、10mg、20mgの各用量における臨床試験結果から、効果は  5mg < 10mg ですが、10mg ≒ 20mg と考えられます。

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