【A】ボルタレンゲルなどの塗布剤は同成分の経口剤と比較して、AUCが非常に低いと考えられます。しかし、ボルタレンゲルを塗布した部分に湿布などを貼付する(密閉する)ことは、著しく経皮吸収が高くなり、CmaxやAUCが増加するため、避けることが望ましいと考えられます。さらに、皮膚への刺激が増加する可能性もあります。
健康成人男子と健康高齢男子(65 歳以上)の腰背部(25×30cm)に 1%ジクロフェナクナトリウム軟膏を塗擦し 8 時間適用(8 時間後に塗擦部位を拭き取り)したとき及び健康成人 男子にジクロフェナクナトリウム錠 25mg を経口投与したときの薬物動態パラメータを 下表に示す。経口投与との比較では血漿中濃度は極めて低く、体循環血に移行する量は著しく低いことが示された。高齢者においては、成人との比較で Tmax の遅延、Cmax 及び AUC の増大等の薬物動態パラメータの変動が認められているが、経口投与時と比較して血漿中の未変化体は低濃度で推移しており、全身への暴露は成人と比べても顕著な相違はないものと推察された。
ジクロフェナク錠25
Cmax (ng/mL) 339.8±129.2 、Tmax (hr) 1.6±0.7、t1/2 (hr) 2.7±1.1 、 AUC0-∞ (ng・hr/mL) 634.7±178.11%ジクロフェナクナト リウム軟膏を塗擦し 8時間適用(8時間後に塗擦部位を拭き取り) 7.5g(成人)
Cmax (ng/mL) 1.1±0.6、Tmax (hr) 14.6±6.2、t1/2 (hr) 39.0±24.8、AUC0-∞ (ng・hr/mL) 20.0± 6.6
(ボルタレンゲル1% インタビューフォーム )
→ボルタレンゲル1%は経口剤と比較して、CmaxやAUCが著しく低く、Tmaxやt1/2が長いことがわかります。
密封包帯法(ODT)適用による試験
ODT 適用による単回及び反復投与試験においてバイタルサイン (血圧、脈拍、体温)、 臨床検査、心電図への影響はみられず、単回投与試験では自覚症状・他覚所見及び皮膚所見にも影響は認められなかったが、反復投与試験において全6例が適用部位の熱感 (2日目より塗擦開始~3 時間目に発現)を、うち1 例は塗擦部位の疼痛、そう痒感を訴え、皮膚所見では塗擦部位の紅斑が5例に認められた。これらは ODT により基剤中に含有されているイソプロパノールが適用部位から揮発せず、皮膚への刺激となったことに起因するものと考えられた。・単回投与試験 (健康成人男子) 7.5g ODT、 8時間適用(n=7)
・反復投与試験 (健康成人男子)7.5g ODT適用、1日1回 8時間、6日間反復塗擦(n=6)塗擦部位は、腰背部(25×30cm)に適用した。
(ボルタレンゲル1% インタビューフォーム )
→密封することにより、揮発性物質であるイソプロパノールが皮膚への刺激を与えることがあります。
1%ジクロフェナクナトリウム軟膏は通常の経皮適用では体循環血への移行は極めて低いが、ODT適用下では吸収の増加が認められるため、1%ジクロフェナクナトリウ ムローションを含め記載した (他の非ステロイド性消炎鎮痛軟膏剤と同様の記載)。 健康成人男子の腰背部 (25×30cm) に、1%ジクロフェナクナトリウム軟膏7.5g (ジクロフェナクナトリウムとして75mg) を単回投与したとき、密封包帯法 (ODT) 非適用時に比べ、t1/2 は同様であったが、Cmaxは約150倍、AUC0-∞は約60倍増加した。 また、1%ジクロフェナクナトリウム軟膏7.5gのODT適用時の1日1 回、6日間 反復投与では、Tmaxの短縮とCmaxの増加を認めた。さらに第6日目の薬物動態パラメータは、ジクロフェナクナトリウム錠25mgの単回経口投与時と比べ、Cmaxは約1.5倍、AUC0-∞は約3.7倍高かったことなどより、ODT適用により著しく経皮吸収が増加し、全身投与 (経口剤、坐剤)と同様の副作用が発現する可能性が考えられた。また、ODT により基剤成分のイソプロパノールが適用部位から揮発しないことに起因すると考えられる塗布部位の皮膚刺激 (熱感、紅斑等) が認められている。
経皮 ODT適用7.5g(75mg) 1日1回8時間 6日間反復
6日目 Cmax (ng/mL) 509.6±220.0 、Tmax (hr) 1.2±0.4 t1/2 (hr) 3.2±0.5 、 AUC0-∞ (ng・hr/mL) 2348.2±873.7経口 (25mg)単回
Cmax (ng/mL) 339.8±129.2 、Tmax (hr) 1.6±0.7 、t1/2 (hr) 2.7±1.1 AUC0-∞ (ng・hr/mL)634.7±178.1
(ボルタレンゲル1% インタビューフォーム)
→密封包帯法を行うと、t1/2は同じですが、Cmaxは約150 倍、AUC0-∞は約60倍に増加すると報告されています。