【Q】顎骨壊死予防のため、抜歯前後で必要なビスホスホネート系薬剤の休薬期間は?

【質問】ビスホスホネート系について質問です。顎骨壊死など歯科受診にも注意が必要かと思いますが、抜歯が必要となれば服薬からどれくらいの期間を開ける必要があるのでしょうか?

【A】休薬期間は患者の「リスク因子」やビスホスホネート系薬剤の「投与期間」によって異なります。そのため、明確な休薬期間は規定されておらず、休薬することで生じる骨折リスクと顎骨壊死の予防効果のバランスを考慮して決定する必要があります。
ただし、ビスホスホネート製剤の投与期間が3年未満かつ、リスク因子がない場合は休薬期間は不要と報告されています。

 

2003年1月から2014年の期間で骨粗しょう症の群では、ONJの発生率は0.001%から0.01%であった。リスク因子は腫瘍患者、糖質コルチコイドの使用、上顎または下顎骨の手術、口腔衛生不良、慢性炎症、糖尿病、義歯、および抗血管新生剤服薬の患者である。
(J Bone Miner Res 30:3. 2015)

→ビスフォスフォネート関連顎骨壊死の発生率は10万あたり1件/年とまれです。また、リスク因子として、腫瘍患者やステロイド服用薬、口腔内の不衛生などが挙げられています。

 

骨粗鬆症患者に対しては、侵襲的歯科治療を行うことについて、投与期間が3年未満で、他にリスクファクターがない場合はBP製剤の休薬は原則として不要であり、適切な口腔管理を行った後に侵襲的歯科治療を行っても差し支えないと考えられる。投与期間が3年以上、あるいは3年未満でもリスクファクターがある場合には判断が難しく、処方医と歯科医で主疾患の状況と侵襲的歯科治療の必要性を踏まえた対応を検討する必要がある。

 

BP製剤の休薬が可能な場合、その期間が長いほど、BRONJ の発生頻度は低くなるとの報告があり、骨のリモデリングを考慮すると休薬期間は 3ヶ月程度が望ましい。抜歯など侵襲的歯科治療後のBP製剤の投与再開までの期間は、主疾患の病状により急ぐ場合には術創が再生粘膜上皮で完全に覆われる 2 週間前後か、余裕がある場合に は十分な骨性治癒が期待できる 2 ヶ月前後が望ましい。また、BP 製剤を休薬するか否かを決定する際には、医師・ 歯科医師と患者との十分な話し合いによりインフォームドコンセントを得ておくことが肝要である。(日本口腔外科学会『ビスフォスフォネート関連顎骨壊死に対するポジションペーパー(改訂追補 2012年版)』)

以上をまとめると
・適切な口腔管理の徹底が必要
・休薬期間が長いほど、ビスフォスフォネート関連顎骨壊死が低下する

歯科治療前
・ビスホスホネート製剤の投与期間が3年未満で、リスク因子がない場合は、歯科治療の前の休薬は不要である。
・ビスホスホネート製剤の投与期間が3年以上、または、3年未満でもリスク因子がある場合、歯科治療の前の休薬は医師の判断となる。

歯科治療後
・休薬期間は3ヶ月程度(骨のリモデリング期間)が望ましいが、それが不可の場合、歯科治療後の休薬期間は最低でも、2 週間(術創が再生粘膜上皮で完全に覆われる期間)〜2 ヶ月 (十分な骨性治癒が期待できる期間)とする。

骨のリモデリング‥破骨細胞と骨芽細胞による連関した制御システム

 

4年未満の経口ビスホスホネートによる治療を受けており、リスク因子がない患者には休薬期間なし。4年以上治療されている or ステロイドを服用している場合は、歯科治療前に2ヶ月間中止することが望ましいとされています。再開は治癒するまでしない(until osseous healing has occurred)こととされています。
(J Oral Maxillofac Surg. 72 (10) : 1938 – 1956.2014)

→米国口腔口腔外科医協会のガイドラインには、歯科治療後の再開までの期間は明記されていません。

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