【Q】エンシュアやラコールNF配合経腸用液などの栄養剤は凍らせても問題ないか?

【質問】栄養剤の服用支援について
温める際は○度以下、などの情報がありますが、凍らせた場合も蛋白変性などは起こり得るのでしょうか?経口摂取において、よく使うアドバイスはありますか?

【A】エンシュアやラコールNF配合経腸用液などの栄養剤は、凍結させても、蛋白変性は起こらず、成分に変化は生じません。しかし、凍結させた場合、製剤学的な特性から、乳化が不安定になり、水分と油分が分離する可能性があります。

また、エンシュアやラコールNF配合経腸用液などの栄養剤は、甘味が強いため、1缶すべてを飲む切ることが難しい患者が散見されます。その場合には、冷蔵庫などで冷やしたり、氷を入れて、冷たくすることで甘みを感じにくくするなどのアドバイスすることがあります。また、必要に応じて、コーヒーを加えたコーヒー牛乳風味にしたり、凍らせてシャーベット状にするなどのアドバイスすることがあります。

 

添付文書の記載は?

ラコールNF配合経腸用液を凍結することは避けてください 。
ラコールNF配合経腸用液を凍結融解した場合、乳化が不安定になり、油分と水分が分離する可能性があります。
(ラコールNF配合経腸用液 インタビューフォーム )

冷凍するのは避けること。
(エンシュアH インタビューフォーム)

→インタビューフォームにおいて、経腸栄養剤は凍結すると乳化が不安定になり、油分と水分が分離する可能性があるため、凍結は避けることと記載されています。

 

凍結条件のおける経腸栄養剤の変化は?

【凍結条件・-20°C・3ヶ月】変化なし。 ただし、凍結解凍は乳化を不安定にするので、凍結保存は避けること。
【高温条件・60°C 3ヶ月】ほとんどのビタミンや脂肪酸に劣化がみられ、性状やpHにも変化が認められた。
【60°C ・暗所・72時間】で アスコルビン酸およびチアミンが大きく劣化し、トリカプリリン、リノール酸、αリノレン酸、リボフラビンおよびpHにも変化が認められた。
(ラコールNF配合経腸用液 インタビューフォーム)

→ラコールNF配合経腸用液は凍結条件では、成分の変化はありませんが、乳化が不安定になり、油分と水分が分離する可能性があります。また、60°Cの高温下では、ビタミン、脂肪酸の安定性に悪影響を及ぼします。

 

各成分の安定性は?

有効成分の各種条件下における安定性
・レチノールパルミチン酸エステル ‥空気又は光によって変化する
・コレカルシフェロール‥空気又は光によって変化する
・トコフェロール酢酸エステル‥空気又は光によって変化する
・フィトナジオン‥光によって徐々に分解し、着色が強くなる
・ピリドキシン塩酸塩‥光によって徐々に変化する
・シアノコバラミン‥吸湿性である
・葉酸‥光によって徐々に変化する
・炭酸水素ナトリウム‥湿った空気で徐々に分解する
・塩化マグネシウム‥吸湿して潮解する性質を有する
・硫酸亜鉛水和物‥空気中で風解する
・硫酸鉄水和物‥乾燥空気中で風解しやすく,湿った空気中で結晶の表面が黄褐 色となる
・硫酸銅‥空気中で風解する

上記以外のものは特に問題なし
(エンシュア リキッド インタビューフォーム )

→温度に関する記載はありません。

 

経腸栄養剤の服用方法について

・冷凍については、解凍後も粘度や品質に影響はない。
・低温で繁殖する菌も存在するため、開封後24時間以内で使用する。
・湯煎 (40~50℃) などで温めて飲むことができます。
・とろみ剤やゼラチン、粉末寒天などで固形化すると、甘みをあまり感じず摂取することができる。(とろみ剤やゼラチン、粉末寒天には、エネルギーが含まれることがあるため、摂取エネルギーに注意する)
・市販のジュースや食品など混ぜる

具体例

1. グラスに氷をいれる。甘みを感じにくくなる。
2. インスタントコーヒーを入れる (コーヒー牛乳にする)
3. 青汁をいれて抹茶風味にする
4. ヨーグルトを入れる
5. 紅茶をいれてミルクティー風味にする
6. ココアをいれる
7. 粉末スープを入れる (コーンスープ、かぼちゃスープなど)
8. 粉末寒天を入れてプリン風味にする
9. ヨーグルトシャーベット。ヨーグルトで混ぜて冷凍庫で凍らせる
10. 氷トレーに凍らせて、かき氷で削る。
※果物の生ジュースなどは、酸性のため混ぜると固まることもあるので避ける

(参考 : feed me 栄養改善データベース https://nutritionmatters.jp/recipe/index.html 2020年6月29日 accessed)

→エンシュアやラコールNF配合経腸用液などの栄養剤は60℃以上に温めなければ、凍らせたり、他の飲料物に混ぜても問題ないと考えられ、患者に応じた服薬方法を提案することが必要です。

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