【Q】腎機能に応じたセフェピムの投与量の調整は?

【A】セフェピムは腎機能低下患者においては中枢神経系の副作用 (セフェピム脳症) のリスクがあるため、投与量の減量が必要となる。

なお、セフェピム脳症の発症にはトラフ濃度が相関するとされている (Lamoth F, Antimicrob Agents Chemother, 2010;54:4360-4367)

さまざまな書籍で腎機能に応じた推奨量が記載されているが、書籍によってその値は異なっている場合が多い。

Q1. 投与方法の違いで、トラフ値はどのように変わるか。

Q2. 同じ1日量であれば、投与回数の違いはさほど影響はないか。

A. マキシピーム(セフェピム)の添付文書より「 CCr10〜30のとき、半減期t1/2 10h」

CCr10〜30における推奨量の例として、
① 0.5g q12h(添付文書)
② 2g q24h(サンフォードガイド)

との記載がある。

また、サンフォードガイドの推奨1日量をもとに、投与回数の増やした投与方法として

③ 1g q12h
④ 0.5g q6h

最後に、サンフォードガイドにおける高用量
⑤ 2g q8h

①〜⑤の投与方法について、 以下の式を用いて、それぞれのトラフ値を比較する。

  • 蓄積率:R=1/(1-(exp(-0.693/t1/2)×τ)
  • 定常状態最高血中濃度:Css,max=Co×R
  • 定常状態最低血中濃度(トラフ値):Css,min=Css,max×(exp(-0.693/t1/2)×τ)
    ※Co=単回投与時の最高血中濃度、τ=投与間隔(h)

 

蓄積率を計算すると、 ① R=1.77 ② R=1.23 ③ R=1.77 ④ R=2.94 ⑤ R=2.35

セフェピム0.5g単回投与時の最高血中濃度Coをαとすると、1gでは2α、2gでは4αとなることから、①〜⑤におけるトラフ値は、

① Css,min=0.79α
② Css,min=0.93α
③ Css,min=1.56α
④ Css,min=1.94α
⑤ Css,min=5.36α

以上より、添付文書における推奨量でのトラフ値と比較して、サンフォードでのそれは1.2倍とさほど差がないことがわかる。

サンフォードにおける推奨1日量で投与回数を変えた場合、1回投与量を減らして投与回数を増やすほとトラフ値が高くなる(0.5g q6hは2g q24hの2.1倍)ことがわかる。 また、CCr10〜30でも減量せず、サンフォードガイドにおける高用量を投与した場合、サンフォードガイドの推奨量(2g q24h)と比較すると5.8倍のトラフ値となることが予想される。

A1.
添付文書における推奨量でのトラフ値と比較して、サンフォードでのトラフ値は1.2倍とさほど差がない

A2.
・サンフォードにおける推奨1日量で投与回数を変えた場合、1回投与量を減らして投与回数を増やすほどトラフ値が高くなる(「0.5g q6h」は「2g q24h」の2.1倍)

・CCr10〜30でも減量せず、サンフォードガイドにおける高用量を投与した場合、サンフォードガイドの推奨量(2g q24h)と比較すると5.8倍のトラフ値となる

 

会員登録していただくとできること
記事を全文閲覧できます。 記事を全文閲覧できます。
記事の全文が検索できます 記事の全文が検索できます。
週1回メルマガが届きます 週1回メルマガが届きます
質問投稿することができます 質問投稿することができます

関連記事

【Q】腎機能に応じたセフェピムの投与量の調整は?

【A】セフェピムは腎機能低下患者においては中枢神経系の副作用 (セフェピム脳症) のリスクがあるため、投与量の減量が必要となる。 なお、セフェピム脳症の発症にはトラフ濃度が相関するとされている (Lamoth F,...

【Q】セフェピム (マキシピーム) の透析患者での投与量は?

【A】0.5g / 日を1日1回投与することが望ましいと考えられる。透析日には透析後に投与する。 血液透析 0.5g 24時間毎 血液透析により本剤の血中濃度が低下するので、本剤の投与は透析後に行うこと が望ましい (参...

新着記事

「用時懸濁」指示時における粉末服用の可否は?

【質問】ドライシロップについて。用法に用時懸濁とだけ記載ある場合は、粉のまま服用できる患者だとしても必ず水に溶かしてから服用する必要があるのでしょうか。 テオフィリンDSのように顆粒のままでも服用でき...

亜鉛製剤による銅欠乏リスク:血清亜鉛値が正常でも銅の定期測定は必要か?

【質問】貧血傾向がある方で、ポラプレジンクや酢酸亜鉛などの亜鉛補充の薬を長期的に内服していた場合の銅欠乏の副作用についてどのようにフォローすべきなのかご教示ください。 採血で亜鉛の項目を確認すること...

欠食はSERMの血栓症、活性型VD3の高Ca血症リスクを高めるか?

【質問】欠食は、SERMと活性型VD3製剤の副作用リスク因子となるか。 SERMの静脈血栓症、活性型VD3製剤の高カルシウムの副作用について。 1食抜くと400mlの水分不足となると言われていますが、摂取水分の減少の面...

新着記事をもっと見る