【A】以下の①〜④の理由より理論上、ピロリ菌の一次除菌 (クラリスロマイシン含む) 後のベルソムラ錠の開始はクラリスロマシンの不可逆な阻害を考慮した約1日以上 (体内から消失する時間) から可能と考えられます。ただし、患者個々で薬物動態が異なるため、年齢や代謝機能を考慮する必要があります。
①ベルソムラ錠 (スボレキサント) とクラリス錠 (クラリスロマイシン) は併用禁忌である。ピロリ菌の一次除菌にクラリス錠 (クラリスロマイシン) が使用されるため併用に注意が必要である。
②併用禁忌理由はベルソムラ錠 (スボレキサント) の血漿中濃度が顕著に上昇し、その作用が著しく増強する可能性があるためである。
外国人健康成人を対象とした本剤(4 mg 単回)とスボレキサントの代謝酵素であるCYP3Aを強く阻害するケトコナゾール(400 mg 1 日1 回経口反復)との薬物相互作用成績45)でスボレキサントの最高血漿中濃度(Cmax)の上昇はわずかであったものの(23 %上昇)、濃度‐時間曲線下面積(AUC)は顕著に上昇した(179 %上昇)。本剤の作用を著しく増強させるおそれがあるため、設定した。本剤とCYP3A を強く阻害する薬剤を併用しないこと。
(ベルソムラ錠 インタビューフォーム 第6版 )
③クラリスロマイシンの半減期は約4.5時間と考える。
クラリスの半減期
単回投与時 (健常成人にクラリスロマイシン200、400mgを空腹時単回経口投与)
クラリス錠200mg 半減期4.04時間
クラリス錠400mg 4.36時間
反復投与 (健常成人にクラリスロマイシン1回200mg、1日2回を14日間空腹時)
4日目 半減期 4.26時間
14日目 半減期4.2時間(クラリス錠 インタビューフォーム 第31版)
血中濃度の半減期の4〜5倍が体内からの消失時間と考えると約18時間から22.5時間。
つまりクラリス錠の体内からの消失時間は約1日と考えられる。
④クラリスロマイシンは不可逆的な阻害(MBI : Mechanism-based inhibition)である。(Clin Pharmacokinet. 2005;44(3):279-304.) 不可逆的な阻害の詳細は現在も不明である。クラリスロマイシンの代謝物がCYP3A4の酵素タンパク質と共有結合を形成して不活化させるためクラリスロマイシンが体内から消失した後も持続的に阻害される。持続的に阻害される時間など詳細は明らかになっていない。