【A】DOAC (直接作用型経口抗凝固薬) は作用発現が早く、作用時間が短いことから周術期管理は他の抗凝固薬や抗血小板薬と比較して扱いやすいと考えられるが、術前中止基準についてはエビデンスが十分ではなく、ガイドラインにも示されていない。以下の文献を参考に各施設で判断する必要がある。
文献1では術前中止期間が24~48時間との記載あり。
文献2 Eur Heart J.2018 Mar 17. doi: 10.1093/eurheartj/ehy136.
ダビガトラン (プラザキサ) |
アピキサバン (エリキュース) |
リバーロキサバン (イグザレルト) |
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低リスク | 高リスク | 低リスク | 高リスク | 低リスク | 高リスク | |
Ccr≧80mL/min | ≧24時間 | ≧48時間 | ≧24時間 | ≧48時間 | ≧24時間 | ≧48時間 |
50~80mL/min | ≧36時間 | ≧72時間 | ≧24時間 | ≧48時間 | ≧24時間 | ≧48時間 |
30~50mL/min | ≧48時間 | ≧96時間 | ≧24時間 | ≧48時間 | ≧24時間 | ≧48時間 |
15~30mL/min | ー | ー | ≧36時間 | ≧48時間 | ≧36時間 | ≧48時間 |
出血リスクの分類 (文献2より)
中止の必要なし | 歯科 | 1~3本の抜歯 |
歯周病治療 | ||
歯槽膿瘍切開 | ||
インプラント治療 | ||
眼科 | 白内障・緑内障手術 | |
切開を伴わない内視鏡検査 | ||
表層手術(膿瘍切開、小範囲の皮膚切開など) | ||
低出血リスク | 内視鏡を用いる生検 | |
前立腺や膀胱生検 | ||
発作性上室性頻拍に対する電気生理検査 カテーテルアブレーション (左心房への心房中隔穿刺を含む) |
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血管造影 | ||
ぺースメーカー及びICD埋込術 (先天性の心臓病など、複雑な解剖学的症状を除く) |
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高出血リスク | 複雑な左心房アブレーション(肺動脈隔離術、VTアブレーション) | |
脊椎・硬膜外麻酔、腰椎穿刺 | ||
胸部手術 | ||
腹部手術 | ||
整形外科手術 | ||
肝生検 | ||
経尿道的前立腺切除術 | ||
腎生検 |
文献3 Intern Med J.2014 Jun;44(6):525-36. doi: 10.1111/imj.12448.
一般名 | 投与量 | 腎機能(Ccr:mL/min) | 低出血リスクの手術(半減期の2~3倍) | 高出血リスクの手術(半減期の4~5倍) |
ダビガトラン (プラザキサ) |
150㎎×2/day | ≧50mL/min | 24時間前 | 48~72時間前 |
30~49mL/min | 48~72時間前 | 96時間前 | ||
リバーロキサバン (イグザレルト) |
20mg/day | ≧50mL/min | 24時間前 | 48~72時間前 |
30~49mL/min | 48時間前 | 72時間前 | ||
アピキサバン (エリキュース) |
5㎎×2/day | ≧50mL/min | 24時間前 | 48~72時間前 |
30~49mL/min | 48時間前 | 72時間前 |
VTE(深部静脈血栓症)に対するカテーテル挿入と除去の場合 | ||
ダビガトラン (プラザキサ) |
リバーロキサバン (イグザレルト) |
アピキサバン (エリキュース) |
24時間前 | 24時間前 | 24時間前 |
【参考文献】
- 周術期管理チームテキスト 第3版 日本麻酔科学会・周術期管理チーム委員会編 公益社団法人 日本麻酔科学会発行
- Eur Heart J.2018 Mar 17. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29562325
- Intern Med J.2014 Jun;44(6):525-36. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24946813