【A】アバスチン(ベバシズマブ)を使用すると創傷治癒遅延が発生すると報告がある。そのため、アバスチンの投与終了後28日間以上あけてからの外科的治療が必要である。
アバスチン投与中に緊急手術を行なったが、創傷治癒遅延は見られなかった症例報告もわずかにある。アバスチンの最終投与から外科的治療までの適切な間隔は明らかになっていない。
(参考 : アバスチン点滴静注用 適正使用ガイド、以下に記載する文献)
再発神経膠芽腫患者を対象とした対照臨床試験では、ベバシズマブを投与されなかった患者と比較して、ベバシズマブを投与された患者の創傷治癒事象の発生率が高かった。
(Bevacizumab Drug informationから引用)一方でベバシズマブ投与中に緊急手術を行なった場合でも術後問題なかった症例の報告もある。(日臨外会誌 2008, 69(12),3173―3176)
転移性結腸直腸癌患者
手術からベバシズマブの最終投与までの間に少なくとも28日(できれば6〜8週間)あければ創傷のリスクは増加しなかった。
(J Surg Oncol. 2005 Sep 1;91(3):173-80)→この試験の中でベバシズマブの最終投与後から28日以内に腸閉塞などの緊急オペが行われたが、創傷のリスクに差はなかったと報告されている。ただし症例数が少ないため、エビデンスは不明である。
転移性乳がん患者
手術の6週間前にベバシズマブを中止+手術後28日間の間隔をあける
・AVADO試験 155人の患者で221件の外科手術 グレード3の出血事象 1人0.9%
・ATHENA試験 672人の患者に1190件の外科手術 手術を受けた6人の患者(0.9%)がグレード3の出血イベントがあり、1人の患者(0.1%)がグレード4の出血イベントがあった。グレード5はなかった
(Eur J Cancer. 2012 Mar;48(4):475-81)
→手術後に重度の出血または創傷治癒の合併症のリスクが低いベバシズマブ療法を受けているmBC患者に対して手術を行うことができると結論づけられている。
再発性神経膠腫患者
・2回目または3回目の開頭術前にベバシズマブ治療を受けた患者
・手術後にベバシズマブ治療を受けた患者
・VEGF標的化学療法を受けたことがない患者
創傷治癒合併症の発生率を比較した。
その結果、術前ベバシズマブ治療を受けた患者における創傷治癒合併症が増加した。手術後にベバシズマブ治療を受けた患者の創傷治癒合併症の増加率は変わらなかった。
(J Neurosurg. 2011 Jun;114(6):1609-16)→この研究の中で、ベバシズマブ治療後、28日以上間隔をあけた患者と28日以内で手術を受けた患者で創傷治癒合併症の発生率には有意な差はなかったと報告されている。さらに術前28日以内にベバシズマブで治療された患者は、ベバシズマブを投与されなかった患者と比較して創傷治癒合併症が増加する傾向にあったが、有意はなかったとも報告されている。
「CVポート増設後、ポートの除去が必要な創傷」はベバシズマブ使用後の10日以内に発生率高かった。(J Vasc Interv Radiol. 2009 May;20(5):624-7;quiz 571)
一方、14日未満の場合に発生率が高かったという報告もある。(Cancer. 2011 Mar 15;117(6):1296-301)