【A】モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、コデイン、メサドンは肝臓で代謝されるため、肝障害時には代謝能が低下します。そのため肝機能障害時には投与量の減量あるいは投与間隔を延長して、薬物の蓄積を防止する必要があります。
(参考 : がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2014年版)
2019年5月現在、これらの薬剤の減量基準や投与間隔延長については明確化されていません。各患者に応じて減量して使用する必要があります。
以下に、中等度の肝機能障害患者に対する各薬剤(オキシコンチン、ナルサス、ナルラピドのみ)のデータを示します。
オキシコンチン(成分名:オキシコドン)
健康成人12例及び軽度から中等度の肝機能障害者12例(肝硬変11例,肝障害1例)にオキシコンチン錠20mgを空腹時単回経口投与したとき、肝機能障害者では AUC並びにCmax は,それぞ れ健康成人の約 2 倍(p = 0.003)及び約 1.5 倍(p = 0.014)と有意に高かった。また,T1/2 は健康成人に比較して平均値で約 2 時間延長した。 (オキシコンチンTR錠 IFより)
→オキシコンチンは中等度の肝機能障害患者に対して、AUCが約2倍、Cmaxが約1.5倍上昇し、T1/2が約2時間延長したと記載されています。
ナルサス・ナルラピド(成分名:ヒドロモルフォン)
中等度肝機能障害患者 12 例にヒドロモルフォン塩酸塩即放性製剤 4mg を単回経口投与したとき、肝機能正常者より AUC が 4 倍高かった。(外国人データ:ナルサス・ナルラピド錠IFより)
→ナルサス・ナルラピドは中等度の肝機能障害患者に対してAUCが4倍上昇しています。
MSコンチン (成分名:モルヒネ硫酸塩水和物)
肝機能障害によりモルヒネの代謝が遅延することがある。また,腎機能障害によりモルヒネの 排泄が低下することがある。したがって,肝・腎機能障害のある患者ではモルヒネあるいはモルヒネ代謝物が蓄積し,作用が強くあらわれることがある。(MSコンチン IFより)
→具体的に肝機能障害によりどの程度モルヒネの代謝が遅延するのかは明記されていません。フェントステープ (成分名:フェンタニルクエン酸塩)
ヘアレスマウス及びヒトの皮膚を用いたin vitro代謝試験でフェンタニルは皮膚中では代謝されないことが報告されており、経皮投与後、フェンタニルは主に肝臓で代謝されると考えられる。なお、ヒト肝ミクロゾームを用いたin vitroでの検討より、フェンタニルから主代謝物であるノルフェンタニルへの代謝に CYP3A4 が主に関与することが知られている。 (フェントステープIFより)
→具体的に肝機能障害によりどの程度フェンタニルの代謝が遅延するのかは明記されていません。デュロテップMTパッチ (成分名:フェンタニルクエン酸塩)
肝硬変合併術後疼痛患者(39~66歳)にデュロテップパッチ 5mg(50μg/hr) 1枚を72時間単回貼 付したとき、対照群(30~65歳)に比して、Cmaxは1.35倍、AUC0-144は1.73倍高く、Tmax及びt1/2にほとんど相違は認められなかった。 (デュロテップMTパッチ添付文書より)
→肝機能障害によりCmaxとAUCは上昇し、Tmaxと半減期は変更ありませんでした。