【Q】「ロゼレム」は夕食後又は夕食後2時間(夕食間)の服用が適切か?

【質問】「ロゼレム錠」は添付文書上、就寝前に投与であるが、メラトニンが分泌し始める夕食後に服用した方が概日リズムの是正に好ましいとの意見もある。
一方で、血中濃度が低下するため「食事と同時」、「食直後」は避けるとの記載もある。
夕食直後を避ければ、夕食後ないしは夕食後2時間(夕食間)の服用は可能か。

【A】「ロゼレム錠」は就寝時刻の2〜4時間前に服薬した方が有効と報告があります。しかし、服薬後の眠気やふらつきなどに注意する必要があり、就寝前の投与で効果が現れなかった場合に服薬時刻を早めることも選択肢の一つと考えられます。

 

【解説】
添付文書の記載は?

用法及び用量
通常、成人にはラメルテオンとして1回8mgを就寝前に経口投与する。

本剤は、就寝の直前に服用させること。また、服用して就寝した後、睡眠途中において一時的に起床して仕事等をする可能性があるときには服用させないこと。
(武田薬品工業株式会社 ロゼレム錠8mg 添付文書)

→就寝前投与の記載がされています。

 

食事と同時又は食直後の服用は避けること。[食後投与では、空腹時投与に比べ本剤の血中濃度が低下することがある。]

健康成人(18例)に1回8mgを空腹時又は食後に単回経口投与した時の未変化体及び主代謝物M-IIの血中濃度の推移は下図及び表1のとおりである。食後投与では空腹時投与に比べ未変化体のCmaxは16%低下した。また、M-IIのCmaxは26%低下、Tmaxは1時間の延長がみられた。
(武田薬品工業株式会社 ロゼレム錠8mg インタビューフォーム)

→「ロゼレム錠」は「食後」投与であれば、Cmaxが低下し、効果が低下する可能性があるため、「食事と同時」や「食直後」の服薬は避けることが望ましいと考えられます。

※M-IIは未変化体の1/17(MT1受容体) 1/28 (MT2受容体) のアゴニスト活性。M-IIの薬理作用は低い。

 

健康成人男子 24 例を対象に、ラメルテオン 8mg、16mg 又はプラセボを夕食 3 時間後に 1 日 1 回 7 日間経口投与した。因果関係が否定できない有害事象はプラセボ群 87.5 %、8mg 群 100 %、16mg 群 100 %と 3 群間で同程度であった。主な事象は眠気であった。(武田薬品工業株式会社 ロゼレム錠8mg インタビューフォーム))

→健康成人男子に対する臨床試験においては、夕食 3 時間後に投与されています。

 

メラトニンはいつ分泌されるか?
70歳におけるメラトニンのピーク夜間濃度は、若者の4分の1以下に低下します。さらに年齢や就寝前にスマホを長時間使用することによりメラトニンの分泌が低下してしまいます。年齢や外的要因によりメラトニンの分泌が変化する可能性があります。

一般的には日が沈むとメラトニンが上昇し、夜の午後11時から午前3時の間にピークに達し、日の出前に急激に低下するとされています。( Daily rhythm in human urinary melatonin. Science. 1975 Jan 17;187(4172):169-71.)

 

「ロゼレム」の服薬タイミングの考察
「ロゼレム」は夕食後服薬であれば、血中濃度が低下する可能性があり、就寝前であれば、メラトニン分泌が増加した段階で服薬するため、効果発現が遅れると考えられます。

「ラメルテオン」を就寝前投与では効果がなかったが、就寝時刻の2〜4時間前に服薬して有効であった(Prog.Med 32: 1297-1298. 2012)

→ただし症例数が15例と少なく、評価するには注意が必要です。

また、メラトニンは午後から就寝前にかけての時間帯に投与すると概日リズムの位相を前進させる効果がある。ラメルテオンを早期に服用することで,位相前進作用が生じ,患者が望む時刻に睡眠を導入できる可能性が考えられる.(J Physiol. 2008 Jan 15;586(2):639-47)

→位相前進作用とは、睡眠の時間帯が早くなることをいいます。

このように薬理学的には夕食後2時間(夕食間)などに服薬するほうが効果は高くなる可能性があります。実際に就寝時刻の2〜4時間前の服薬は有効と報告されています。

 

まとめると、「ラメルテオン」は就寝前の投与で効果が現れなかった場合に服薬時刻を早めることで有効となる可能性があります。ただし、就寝前ではなく、夕食後2時間(夕食間)などに服薬する時は、眠気やふらつきなどに注意する必要があります。

 

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