【A】ナウゼリン錠の効果を最大化させるためには食前投与が望ましいと考えられます。
ナウゼリン錠は食後に服薬すると吸収が遅延し、効果発現が遅くなります。一方で、絶食下ではTmax=15分と非常に早くなります。(協和発酵キリン ナウゼリン錠5、10 インタビューフォーム)
・ナウゼリン錠を食後90分後に服薬した場合のTmaxは投与後2時間であった。
・「食後」のCmaxは空腹時よりも低値となる一方で、AUCは「食後」投与の方が高値を示した。
・「食後」にAUCが増加する理由は胃内容排出が遅延するためであり、胃のドパミン作動性受容体に到達するためには、吸収可能なタイミングで胃腸壁を通過する必要がある。「食後」であれば、ナウゼリン錠は胃のドパミン作動性受容体に結合しにくいため、効果が不十分となる可能性が考えられる。(EEurJ Drug Metab Pharmacokinet.6 : 61-70, 1981 )
→これらの報告から「空腹時」の方が効果発現が早いことがわかります。また、「食後」であればAUCは上昇しますが、嘔吐・悪心などの消化器症状がある患者に対して迅速な効果を期待する必要があり、「空腹時」、「食前」投与が望ましいと考えられます。
また、「食後」投与であれば、ナウゼリン錠は胃のドパミン受容体と結合しにくいため、効果が低下する可能性があります。
ナウゼリン錠の効果は胃のドパミン受容体の結合と密接に関連していることは、坐薬と錠剤の用量の違いからも理解できます。
ナウゼリンの坐剤の成人量は1回60mgを1日2回であるのに対して、錠剤は1回10mgを1日3回と用量に大きな差があります。ナウゼリン錠(60mg)と坐剤(60mg)を比較すると坐剤の方が血中濃度の立ち上がりは遅くなりますがAUCは同等であったと報告されています。(EurJ Drug Metab Pharmacokinet.6 : 61-70, 1981)
坐薬と錠剤の剤型間の用量に大きな差があるのは、AUCは同じですが、ナウゼリン錠は胃のドパミン受容体を直接遮断するため、坐薬と比較して用量が少なくても効果発現するためと考えられます。
まとめると
・『ナウゼリン®︎錠』は消化器症状がある患者においては効果発現の速さと効果の最大化のために食前投与が望ましい。
・『ナウゼリン®︎錠』はコンプライアンス不良患者などで「食前」服薬が不可である場合に、効果の遅延や低下を考慮した上で、「食後」服薬が可能であると考えられる。
・『ナウゼリン®︎』錠と坐薬で用量が異なるのは胃のドパミン受容体を直接遮断するか否かによると考えられる。