【Q】肺がん患者に吸入薬が使用されるか? ステロイドや抗コリンなど推奨は?

【質問】肺がん患者に吸入薬が使用されることはありますか? また、ステロイドや抗コリンなど推奨されるものがあるなら教えてほしいです。

【A】COPDを併発している肺がん患者においては、COPDの重症化を抑制するため、吸入ステロイドなどの吸入薬が使用されます。肺がんと呼吸器疾患の治療のバランスを取りながら治療を進めていく必要があります。肺がんはCOPDに比べて、生存率に与える影響が大きいケースが多いため、肺がんに対する治療が優先されることがありますが、COPDに対する積極的な治療介入も行うことが必要と考えられます。また、肺がん患者における呼吸苦や呼吸困難感に対しては、オプソ内服薬などモルヒネ製剤の検討も選択肢の一つと考えられます。

以下に詳細を記載します。

COPDは肺がんのリスクとなるか?

COPDは肺がん発症の要因の一つであり、肺がんのリスクを高める。肺の炎症や繊維化に関連していると考えられる。(Prospective study of pulmonary function and lung cancer. Am Rev Respir Dis. 144 (2) :307-11, 1991)

大規模前向きコホート研究においてCOPDの重症度と肺がんリスクが大きく関係している。
(Results from the National Lung Screening Trial-American College of Radiology Imaging Network Cohort. Ann Am Thorac Soc 14:392, 2017)

→COPDは肺がんのリスクを上昇させると報告されています。

COPDと肺がんを併発している症例は?

肺がん患者にCOPDが併発している症例は少なくなく、9%であった。
(Comorbidities and risk of mortality in patients with chronic obstructive pulmonary disease. Am J Respir Crit Care Med 186 : 155-161, 2012. )

日本国内における剖検例1189例(男性646例,女性543例,年齢分布46~104歳,年齢中央値79歳)において、COPDと肺がんを合併していた症例は18.8%であった。
(剖検からみた複数疾患合併の実態呼吸器疾患を中心として. THE LUNG-perspective 24 : 292-297,2017)

→COPDは肺がんリスクを上昇させるため、併発しているケースは多いと考えられます。

 

肺がん患者においてCOPD治療を積極的に行うべきか?

肺がんStage1Aであれば、COPDは明らかに生存率に影響を与えるが、進行肺がんのおいては、COPDよりも肺がんが生存率に与える影響が大きい。
(Association of chronic obstructive pulmonary disease and tumor recurrence in patients with stage IA lung cancer after complete resection. Ann Thorac Surg 84 : 946-950, 2007.)

→肺がん初期であれば、COPDが生存率に大きな影響を与えるため、積極的なCOPDの治療が必要と考えられます。一方で、肺がんのStageが進行していくにつれて、COPDの生存率への寄与が低くなっていきます。(肺がんの生存率への寄与率が高くなる)

COPDを併発している肺癌は、肺癌の治療が優先されることがあるが、禁煙や気管支拡張薬、リハビリテーション等を含めたCOPDに対する積極的な治療は必須である。 (日本内科学会雑誌 107 : 1017-1027, 2018)

→COPDを併発している肺癌は、両疾患を総合的に評価した上で治療方針を決定し、肺癌治療を安全に行いながら、COPDの治療を積極的におこなっていく必要がありそうです。

肺がん患者における呼吸苦や呼吸困難感に対しては、オプソ内服薬などモルヒネ製剤の検討も選択肢の一つと考えられます。呼吸困難感についてはこちらの記事に参考にしてください。https://closedi.jp/6943

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