【質問】漢方薬の用法は、添付文書に一律「食前投与」と記載されていますが、「食前投与」と「食後投与」で効果や副作用に違いがある等の報告はありますか。
【A】 漢方薬の服薬タイミング(食前投与or食後投与)に関するメジャーな文献はなく、現在も様々な意見が議論されています。漢方薬は多くの有効成分が配合されているため、正確な血中濃度を測定することは難しく、食前と食後の吸収の違いを調査しにくいとされています。
副作用に違いがあるか?
作用の激しい附子や麻黄を含む漢方は空腹時服用の方が吸収が遅く、副作用を考慮すると食前か食間がいいと考えられています。
効果に違いがあるか?
一般的に食後投与よりも食前投与のほうが吸収がよいとされているため、効果に違いがでる漢方薬もあるとされています。
基本的には添付文書上の用法は漢方薬の種類に問わず、食前に設定されているため、食前での服薬が望ましいとされます。
食前と食後投与でAUCが変わらない漢方成分(以下に小柴胡湯エキスに関するデータを記載)もあるため、服薬状況などを考慮し、食後服薬も可能だと考えられますので、以下のまとめを参考に柔軟で適切な判断が必要となります。
小柴胡湯エキス中の成分である【グリチルリチン】と【バイカレイン】と【代謝物であるグリチルリチン酸】の食前投与と食後投与のそれぞれの血中濃度を測定した報告があります。【グリチルリチン】と【バイカレイン】は食前投与と食後投与でAUCは変わりませんでしたが、Tmaxが食後投与で延長しました。また、【代謝物であるグリチルリチン酸】は食前投与で血中濃度が高い値を示しました。【グリチルリチン】と【バイカレイン】は食前投与と食後投与でAUCが変わらないため、コンプライアンスが悪い患者では食後投与も可能であると結論づけられています。
(【代謝物であるグリチルリチン酸】の血中濃度は個人差が大きいことから、考察されてない。)
(薬事日報 第8128号(37) 平成5年1月1日)
吸収
・一般的に食前投与のほうが食後投与よりも吸収がよい。
・漢方薬の成分を下部消化管に早く到達させ、薬効を出すには空腹時のほうがよい。
・アルカロイドを含む漢方は、空腹時は胃内のPHが低いため、アルカロイドにアミノ基がイオン化する。イオン化することで水溶性が増し、細胞膜を通りにくくなり、吸収が低下する。副作用
・作用の激しい附子や麻黄を含む漢方は空腹時服用の方が吸収が遅く安全である。相互作用
・西洋薬との相互作用を避けることができる。その他
・満腹になって食後に飲むよりは食前の方が飲みやすい。
・コンプラインスは食後投与の方が高い。【参考】
新薬と臨床 J.New Rem. &Clin Vol.56 No.12 2007
漢方に強くなる服薬指導ワンツースリー
日医雑誌,2009 Vol137, 7,1397-1399
服用時間による小柴胡湯エキスの血中濃度
小柴胡湯エキス中の成分である【グリチルリチン】と【バイカレイン】と【代謝物であるグリチルリチン酸】の血中濃度の推移結果を以下に記載する。グリチルリチン
食前→0.5時間と2時間にピーク
食後→2時間にピーク
AUCは変化なしバイカレイン
食前→2時間と12時間にピーク
食後→4時間と12時間にピーク
AUCは変化なし代謝物であるグリチルリチン酸
食前→8時間にピーク
食後→8時間にピーク
最高血中濃度は食後で約1/2.
(薬事日報 第8128号(37) 平成5年1月1日)