【A】歯を着色させる薬剤として、テトラサイクリン系抗生物質や鉄製剤が挙げられます。
テトラサイクリン系抗生物質は「小学校入学前までの永久歯形成期はできる限り投与を避けること」、「鉄製剤はブラッシングなど歯のケアを行うことで歯の着色を予防すること」ができます。以下に詳細を記載します。
①テトラサイクリン系抗生物質
・出生直後から小学校入学前の期間の永久歯形成期にテトラサイクリン系抗生物質を多量に投与すると歯の着色を起こすことがあります。
・テトラサイクリン系抗生物質の歯の着色については1950年代あたりから報告されています。(Pediatr Clin North Am 3, 295−303, 1956、Lancet 21, 827−829, 1962)
・テトラサイクリン系抗生物質は金属イオンに結合しやすい性質があるため、歯のCaと結合後、象牙質に沈着します。Caと結合されたテトラサイクリン抗生物質は紫外線により色が変化するため、歯が着色しているように見えてしまいます。
・象牙質は歯の中層にありますが、歯の白さなどを決定する大きな因子です。その理由は歯の外層が半透明なエナメル質で覆われているため、歯の中層にあっても、透けて見えてしまい、歯が着色してるように見えてしまうためです。
添付文書には以下のとおり記載されています。
胎児に一過性の骨発育不全、歯牙の着色・エナメル質形成不全を起こすことがある。また、動物実験 (ラット) で胎児毒性が認められているので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
小児 (特に歯牙形成期にある8歳未満の小児) に投与した場合、 歯牙の着色・エナメル質形成不全、また、一過性の骨発育不全を起こすことがあるので、他の薬剤が使用できないか、無効の場合にのみ適用を考慮すること。
(ミノマイシン錠50mg 添付文書)
②鉄製剤
フェロミア錠などの鉄製剤を服薬後に歯が変色(黒色、茶褐色)することがあります。
これらの鉄製剤による歯の着色は鉄イオンとタンニン酸との結合によるものであり、ブラッシングなどで着色を落とすことができます。以下に鉄製剤の歯の着色についてまとめます。
着色の予防
・タンニン酸が多く含有された茶などによる服用を避け、水や白湯などで服用する
・歯磨きをしっかり行う
・重曹で歯磨きを行う。ブラッシングなど歯のケアが十分でない方 (高齢者、義歯)は重曹を水に溶かしガーゼなどで歯の表面を拭く。
着色した場合
・ブラッシングを十分に行う。重曹で歯磨きする
・歯科医院にて物理的に除去する
着色の因子
・薬剤を長時間口腔内に含んだ場合
・服薬後に口腔内に残渣がある場合
・ブラッシングなど歯のケアが十分でない方 (高齢者、義歯)
(参考 : エーザイHP)